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4月

2019年04月11日
「地震で失ったものもあるけれど、得られたものの方が大きかった」
「これまで支えてもらった分、これからは自分たちが支えたい」
4月6日、東京新聞夕刊のトップに、安平(あびら)町早来(はやきた)小学校卒業生たちの言葉があった。
安平町は、昨年ぼくが11月~今年1月にかけてレポートした、あの北海道地震の被災地だ。
その影響で学校が使えなくなり、さまざまなことができなくなった。
今自分たちにできることは何か、と、早来小学校の6年生26人が話し合ったのだという。
『8000人の笑顔プロジェクト』
安平町の人口とほぼ同じ数だけ、自分たちでいろいろな人から笑顔のメッセージを集め、それを卒業式で公開し、町の人を元気にしたい。
そういう願いから始まったプロジェクトだった。
実際、自分の足を使って写真とメッセージを集める子どもたち。
けれど、それだけでは間に合わない。
子どもの動きが大人を動かし、SNSなどのネット上も駆け巡り、卒業式を飾ったその笑顔の写真付きメッセージは、なんと「34,876!」人。
道内はもとより全国、世界中10か国以上からメッセージが届いたのだという。
冒頭の言葉は、目標の4倍以上を集めた子どもの声として紹介されていた。

担任である富樫忠浩先生は、笑顔のメッセージを届けてくれた人々に向け、こうメッセージをしたためた。
「(前略)この子たちは小学校の目の前にある早来中学校の仮設校舎へと進学します。3年間この仮設校舎で過ごす可能性も考えられる状況です。そのような中でも胸を張って進んでほしいという思いです。小学校の一つの教室から、このような発信ができ、たくさんの人の支えを実感した子ども達であれば、きっと大丈夫だと考えます。(中略)子どもたちが成長し、同じような誰かのために力を尽くすことで、この御恩を返させていただきます。(後略)」

以前、この中でも紹介した「PTG(ポストトラウマチックグロウス)」=「心的外傷後成長」。
災害や紛争、戦争等によって、人の心は大きく傷ついていく。
それが大きなダメージを残すことを「PTSD(ポストトラウマチックストレスディスオーダー)」=「心的外傷後ストレス障害」と呼び、こちらがクローズアップされるが、実は、ピンチだからこそチャンスにもなるのだ。
この子たちは自分たちで何ができるか話し合い、自分が住む町の人口と同じだけの笑顔のメッセージを集めるという、途方もない計画を立てた。
それが大人を動かしたということ、そして目標の4倍以上の笑顔のメッセージを集めたこと、それは間違いなくPTGを招いたといえるのではなかろうか。
そして何より、大人は信頼できる!きっとそう感じたことだろう。
これは、安平町の未来を語る上ではとんでもない財産だということだ。