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11月

アメリカの大統領選挙は「一応」のカタがつき、民主党のジョー・バイデン氏が勝った。
今の子どもに、日本の首相とアメリカの大統領の名前を聞いたら、
アメリカの大統領の方が正解が多いのではないかと思われるくらい、日本では報道が連日盛んだった。
その報道には、どちらが大統領になったら日本が安泰かを議論する内容も多くあった。
その点については僕にはよくわからないことが多すぎたが、ひとつだけ、確かな違いがあることだけは分かった。
それは、アメリカの「パリ協定」離脱からの復帰だ。

パリ協定は、地球温暖化を人為的なものとして、世界が協力してその原因となっている
温室効果ガスの排出量を抑えようという、達成年を区切り数値目標を掲げて約束しあったものだ。
トランプ氏はその約束はしないと宣言し、つい先日11月4日にそれは現実のものとなった。
アメリカのみならず、オーストラリアや世界の各所で未曽有の山火事が発生し、
記録的なハリケーンが何度も国土を流しても、トランプ氏は、
自身がコロナに罹ってもマスクはしないその態度同様にパリ協定を軽視し続けた結果だった。
世界最大の温室効果ガスの排出国である中国に続く、第二位の排出国であるアメリカ。
当然だが、この国がパリ協定を離脱する影響は計り知れない。
直接的な影響は、温室効果ガスの削減自体にブレーキがかかること。
間接的だがボディブローのように効いてくる影響は、国際社会のリーダーシップを中国が握る可能性が高いことだ。
かつてアメリカがそうだったように、今は中国が突出した温室効果ガスを出しつつ経済成長を遂げている。
皮肉なことに、経済的な豊かさと温室効果ガスの排出量はほぼ比例しているのだ。
単純化すると、エネルギーは、消費すればしただけ経済が活発に動く。
トランプ氏が、アメリカの再生を叫びパリ協定から離脱したのもそれが理由だ。

しかし、当然だが、それで今後のアメリカの輝かしい経済が保証されることは、もはやない。
新型コロナに代表される未知のウィルスの登場もそうだが、先述した未曽有の山火事、ハリケーン、
そして砂漠の拡大や永久凍土の融解、世界の屋根と言われる峰々や極点の氷河・氷床の溶解と流出等々…
それこそ、こうした自然災害による被害額はそれとは比較にならないほど膨大だ。
もっと急務と思われることは、このままの勢いで温暖化が進めば、
まず植物の移動が間に合わないと言われていることだ。
地球的時間では、氷河期と間氷期は交互にやってきており、それこそ地球すべてが凍てつき
アイスボールとなった時代まである(現在は氷河が残っているのでまだ氷河期にある)。
それは数千年から数万年をかけてじわじわと訪れ、
その時間の中で気候の変動に合わせた生物の進化や植生の移動が行われた。
けれど、今の温暖化はこの変化をはるかにしのぐスピードで起きている。
植生の変化が間に合わなければ、植物は壊滅的な打撃を受ける。
ありとあらゆる動物の生命源となってきた植物が壊滅的となることが何を意味するか、
少し考えればわかることだ(肉食獣も草食獣を食べる、その草食獣がいなくなる!)。
おそらくその前から農地に適した場所の争奪が起り、食料そのものの奪取をめぐっての紛争が起きるだろう。

それだけではない。
植生に打撃を与えるくらいになれば、峰々や極点の氷河・氷床は溶け、海面が上昇する。
雪解け水の枯渇は、山岳に住む人たちも直撃するだろう。
世界の多くの主要都市は海岸線につくられており、海面上昇に対してはおそらくなすすべがない。
東京では、臨海部やゼロメートル地帯に人は住めなくなり、地下鉄がほぼ水没し、
都市機能は完全に断たれてしまうかもしれない。
そして、氷が溶けだすということは、氷に閉じ込められていた温室効果ガスが放出されることを意味している。
それが臨界点を超えれば、もはや後戻りができない負のスパイラルが加速度的に繰り返される。
そして、きっとそんなことは、そう遠くない未来に起こりうる。

持続可能な開発と社会―国連はそれを目指し、SDGs(エスディジーズ)基準を定めた。
これからは、個人のエゴとの戦いとなる。
もちろん、僕も含め、ひとりひとりがその当事者だ。
今後は、自然災害はもはやそのまま自然とは呼べない背景も増えるのだろう。
人の知恵と理性がそれを阻止するか、それともエゴに負けてしまうのか。
地球が壊れていくのではない。
地球は、いつだってあるようにしかない。
人をはじめとする、生物が壊れていくのだ。

バイデン氏は、大統領就任初日にパリ協定への復帰を公約していた。
しかし、バイデン氏とトランプ氏が本当に僅差だったことが、現実の難しさを物語っている。
子どもに、安心を残せるのか。
自分自身に問いかける日が続く。



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